スギヒラタケというきのこをご存知でしょうか。
2004年まで東北、北陸、中部地方を中心に野生のものが広く食べられていました。美味しいキノコとして人気があったキノコです。
私は新潟県北部出身なので父親に聞いてみたところ、昔は確かにスギヒラタケを食べる習慣があったそう。父親いわく私自身も子供の頃は食べていたとか。(子供の頃だったため味の記憶は無いです。)
スギヒラタケはとても身近にあるキノコでしたが、ある日毒キノコへと扱いが変わってしまいました。
美味しいキノコからなぜ毒キノコという扱いになってしまったのか。この記事ではその経過を説明していきます。

背景と発端:
- 2004年秋、新潟県北部を中心に透析患者を含む高齢者で原因不明の急性脳症が多発し、合計55名が発症。うち20名が死亡(致死率36%)。秋田、山形を含む3県で現地で疫学調査が実施されました。
- 初発事例は新潟県の透析患者3名。調査の過程でスギヒラタケの喫食が関連として浮上しました。
調査概要
- 患者概要:
- 症例数:55名(男性23名、女性32名)。
- 平均年齢:70歳。
- 死亡率:36%(20名が死亡)。
- 腎障害:85%の患者が腎機能障害を持ち、60%が透析を受けていました。
主な症状
- 意識障害(76%)。
- 不随意運動(56%)。
- 上肢振戦(47%)。
- 下肢脱力(42%)。
- 発熱:入院時は37.5℃以上が7%だったが、入院後8日以内に91%で確認。
臨床検査結果
- 血液検査:
- 白血球増加:55%。
- 血小板減少:30%。
- 髄液検査:
- 細胞数は低値が多く、蛋白は中等度上昇。
- 画像検査:
- CTおよびMRIで大脳半球や脳幹にびまん性の異常信号を確認。
疫学的関連性
- 患者の96%がスギヒラタケを喫食していた。
- 喫食と発症の因果関係は明確ではないが、腎機能障害が発症リスクを増大させる可能性が示唆されました。
- スギヒラタケを喫食していない患者も少数ながら存在。
結論と推奨
- 原因は完全には特定されていないが、スギヒラタケの喫食を控えるよう注意喚起が行われました。
- 感染症発生動向調査を通じ、症例の監視が継続中です。
健常者におけるスギヒラタケ中毒事例
- 63歳健常女性がスギヒラタケ入り味噌汁を摂取後、めまい・嘔気・体動困難を呈し、救急搬送され事例があります。症状は対症療法で改善、後遺症はなく軽快しました。
- スギヒラタケには複数の毒性物質(レクチン、青酸など)が含まれる可能性が示唆され、摂取は控えるべきとされました。
過去の類似事例の再検討
1997~1998年における事例:
- 新潟の病院で腎障害を有する患者が急性脳症を発症した過去症例が再確認され、同様の臨床像(外包病変)が特徴的であったことが判明しています。
- 本症例は2004年初認識ではなく、以前から地域的に存在していた可能性が指摘されました。
まとめ
スギヒラタケが急性脳症の原因物質として関連を疑われていますが、毒性機序や直接的証拠は不足しているため、原因物質と断定できていない状況です。
しかし因果関係が否定できない以上、喫食は控えた方が無難でしょう。
可食と思っていたキノコが、ある日毒キノコに変わってしまうなんて、普段食べている人はさぞ驚いたことでしょう。今後もこういったキノコが出てくる可能性も否定できません。
個人的にはクリタケやコウタケが好きでよく食べるのですが、図鑑によっては「食注意」の扱いなので今後毒キノコに変わらないことを祈っています。
参考文献一覧
- 農林水産省. 「スギヒラタケに関する情報」. 農林水産省公式ウェブサイト.
URL: https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/rinsanbutsu/sugihira_take.html - 日本職業・災害医学会. 「スギヒラタケ摂取と腎障害」. 職業・災害医学, Vol.58, No.5, pp.247-250.
URL: http://www.jsomt.jp/journal/pdf/058050247.pdf - 小田温ら. 「県北に多発した急性脳症について」. 第45回新潟脳神経外科懇話会), 新潟医学会雑誌, 119(8), 507 (2005).
- 国立感染症研究所. 「東北・北陸等での急性脳症多発事例について」. IASR Vol.28, No.334.
URL: https://idsc.niid.go.jp/iasr/28/334/dj3345.html
